整形外科専門医として
運動器(筋肉・骨・関節)疾患全般に関して、早期診断・早期治療・リハビリ治療・予防治療などを専門性をもって行えるよう、日々新しい情報・技術を取り入れ、良質かつ安全で心のこもった医療を提供できるように努めております。
代表疾患と治療法
1.変形性膝関節症:
筋力低下、加齢、肥満、過去の外傷などをきっかけに膝の機能が低下し、膝関節内の軟骨がすり減ったり半月板に傷がつき、痛みを引き起こします。進行すると関節の曲げ伸ばしや歩行に障害がでてきます。
治療は、まず外用剤(湿布、塗り薬)や内服剤を使い、痛みを和らげます。強い疼痛に対しては痛みや炎症を抑える注射をします。痛みが和らいできたところで、変形の進行を抑える目的でヒアルロン酸関節注射を始めます。
変形に伴う症状は、なかなかすぐには軽減してこない場合もあります。根気よく治療、ケアを続けていくことが大切です。
日常生活での注意や、膝を支える筋肉の筋力トレーニングなどもとても重要になってきますのでお気軽にご相談下さい。パンフレットなども取りそろえております。
2. 腰椎椎間板ヘルニア・脊柱管狭窄症:
加齢や激しい運動・過労などで背骨(脊椎)の骨と骨の間にあるクッション=椎間板が痛んでしまい突出し、そばを走る神経を圧迫して痛みやしびれ、神経痛(坐骨神経痛)を引き起こすのが椎間板ヘルニア。椎間板だけではなく骨や靭帯が変形・変性し神経の通り道(脊柱管)全体を狭めてしまい神経を圧迫して症状を引き起こすのが脊柱管狭窄症です。どちらも、症状が進行してくると歩行障害、麻痺(筋力低下)、排尿・排便に支障がでることもあります。
治療は、まず安静に。症状が軽い場合は、痛み止めの内服や外用剤(湿布、塗り薬)を使用しながら、リハビリ(マイクロ波・腰椎牽引)を行います。
疼痛が強い場合は、局所注射、神経ブロック注射など行います。これで約85~90%の人は良くなるといわれていますが、中には症状が改善しなかったり、悪化してくる場合もあります。その場合は、手術的治療なども検討し精査(MRIや脊髄造影など)をお勧めします。
※基幹病院にて円滑に検査ができるよう、当院から予約致します。
3.脊椎骨粗鬆症:
ご存知のとおり、骨に鬆(す)が入ったようなスカスカの状態・骨がもろくなり、わずかな衝撃でも骨折を引き起こしてしまう状態です。骨量は男女ともに30歳代後半をピークに自然に減少し始め、骨粗鬆症は男性では50歳代から、女性は40歳代から徐々に発生するといわれています。60歳代では約33%、80歳代では60%を超える人にみられます。無症状の場合もありますが、初期は背中の疲労感、背部痛、腰痛、進行してくると背中が丸く(円背に)なってきます。骨折をして発覚することもあります。
また、現在治療中の病気(甲状腺疾患、糖尿病、関節リウマチなど)に伴ったり、生活環境(痩せすぎ、運動不足、コーヒー・アルコールの多量摂取、喫煙など)によっても発症しやすくなることがあります。
気になる方は、お早めにご相談を。
※本年4月から当院でも、骨塩定量(骨密度)を測定することができます。予約も可能です。お気軽にお申し出ください。
治療
まずは生活環境の改善を指導致します。そして重症度に応じて、適した薬剤を選択し治療を開始致します。
使用薬剤
1.活性型ビタミンD3製剤
腸管からのカルシウムの吸収を助け、骨の形成を助けます。1日1回~2回服用します。
2.ビスホスホネート製剤
骨からカルシウムが溶け出すのを抑えます。1日1回、週1回、月1回服用するタイプがあります。また、4週に1度点滴静注するタイプもあります。
3.カルシトニン
骨からカルシウムが溶け出すのを抑え、痛みを和らげる働きがあります。当院にて週1回筋肉内に注射します。
4.SERM(選択的エストロゲン受容体修飾薬)
骨からカルシウムが溶け出すのを抑えます。1日1回服用します。
5.カルシウム
食事で足りないカルシウムを補給します。1日2~3回服用します。
6.PTH製剤
骨の形成を促進(骨をつくる)する薬です。
- 自宅にて1日1回自己皮下注射するタイプ
- 当院にて週に1回皮下注射するタイプ
があります。
7.ビタミンK
骨の形成を助けます。1日3回、食後に服用します。
※血液検査によって骨代謝マーカーを測り、治療効果の判定も行っております。
※痛みを伴っている方には、痛み止めの薬も併用します。
4. 関節リウマチ:
自己の免疫が自分の手足の関節を侵し、これにより関節痛、関節の変形が生じる膠原病の一つです。
放置すると不可逆的な関節変形を引き起こすため早期発見、早期治療が重要となります。当院では合併症に注意しながら、抗リウマチ薬の第1選択薬としてメトトレキサート(リウマトレックス eq oac(○,R)R)を主体に治療を行っています。そのほか、免疫調節薬、非ステロイド系抗炎症薬、ステロイド剤などを用います。
治療効果が得られない場合は、レミケード eq oac(○,R)R、エンブレル eq oac(○,R)Rなどの生物製剤による治療も導入しております。現在約50名のリウマチ患者さまが当院にて治療を受けておられます。
5.外傷(捻挫・骨折):
まずは局所の安静・圧迫・挙上と冷やすことが大切です。
覚えやすい応急処置としてRICEの法則というものがあります。
- R(rest):安静
- I(icing):冷却(冷やすこと)
- C(compression):圧迫
- E(elevation):挙上
です。怪我をした際、自宅、外出先、運動時などすぐに行えるように覚えておくと、あわてないですみますよ。
応急処置後の治療も基本はRICEです。
まずは消炎鎮痛剤の内服、湿布を用いて痛みと腫れを軽減させます。そして、
捻挫の場合、重症度に応じて、テーピング、包帯、ギプスを用いて、R・局所安静を保ちます。そして自宅では、I・冷却とE・挙上を続けていただきます。
骨折の場合も基本的には同じですが、骨折部位によってはより安静度を高めるためにギプス固定を行うことが多いです。
骨折部のズレがひどい場合は徒手整復(ズレを戻すこと)を行います。痛みを伴う行為ですが大変重要かつ必要な処置です。
整復ができない程ずれている場合は、手術が必要になります。この際は迅速に手術可能な医療機関へご紹介いたします。
また脊椎圧迫骨折には体幹ギプスを巻いてコルセットを作整しています。